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くらげのしっぽ

くらげのしっぽ

幼銃イーナの怪談録番外編

イーナが銃精になるまでの話から、海月の知らないイーナの海月防衛戦まで
イーナ視点で見た世界を語る

クーデレっぽいけどヤンデレっぽい

狐耳で狐尻尾

赤福餅が好物

コンパクトダットサイトのレティクルやレーザーサイトのような碧の瞳

そんな銃精の少女を知る為の番外編
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くらげのしっぽ プロローグ

プロローグ

私の最も古い記憶の話。

何年たったのか、どうして此所に居るのかも分からなくなって居た私はただ森の中を彷徨って歩く。

何かを探している筈だけど、もう何を探して居るかも分からない。

ある日乾いた破裂音がして、振り返ると血を流した子狐が倒れて居た。

私は子狐に駆け寄って何とか助けようとするけれど、子狐はすぐに死んでしまって私の足下で透けた姿の子狐がこっちを見上げる。

私と同じになってしまったんだなぁ…と、少し悲しくなって子狐に手を伸ばす。

子狐はその手に乗って私に抱き抱えられて丸くなった。

その少し後で犬の鳴き声がして正面を見たら、毛並みの整った柴犬が私に向かって激しく吠えて居る。

その犬を追いかけて飼主と思われる中年男性が猟銃を片手にやってきて

「ひぃっ!」

私を見て悲鳴をあげると

「樹霊様(じゅだまさま)!!山の神さんが出たぞぉ!」

犬を抱え、猟銃を落として山を疾走して行ってしまう。

「これ、どうしよう?」

私は銃を拾って子狐を見ると、子狐は自身の冷たくなった身体を跨いで、私を山の下の村へと案内してくれた。



村は酷い有様だった。

畑は荒れ、道には何やら呻きながら家の壁に持たれたり、地面に突伏したままで動かない人達があふれている。

変わりに生きてない者が歩いていて、私を見て避けるように去って行く。

何度目の路地を曲がったかわからなくなり始めた頃、騒がしい声が響く家の前に着いて私と、私の前を歩く透明な子狐が立ち止まる。

そして子狐は振り返って

「助けようとしてくれたお礼だよ。間に合わなかったけど。君、生きてる人にも見えてるみたいだから面倒になる前にその僕を殺した銃を返してさっさと森に戻りな。」

そう言い残して、私を置いて消えるように居なくなってしまった。

家からは

「本当に見た!」

とか

「祟られる前に奉ってやらにゃ」

とか聞こえていて、私が玄関の戸を開けて銃を玄関に置いて行くとそこに居た十人ほどの大人全員が、目を丸く見開いて硬直している。

私は少し悲しくなって

「これ、落としてたので返しますね。」

そう言って外へ駆け出す。

私は死んで居る。

もう誰も一緒には居てくれない。

それから数日たったある日。

村からお坊さんのような人と、9人の木材を抱えた大人が森に私を探しに来た。

一人減って居たのは、多分飢餓とか疫病のせいだと思う。

お坊さんは私を見ながらお経のようなものを唱え始めて、その間に大人達はその木材を組み立てて居る。

お経を聞いて眠くなった私が目覚めた時、私は真新しい小さな祠の中に居た。

始めはびっくりして出ようと頑張って見たりもしたけど、見えない壁に当たると痛くて50回くらい体当たりしたところでもう止めようと思ってただ外を見るようにした。

それからさらに数年、数十年。

毎日誰かがお参りに来て、何かを供えて、何かを願いにやってきた。

祠から村は一望出来て、村から飢餓や疫病が無くなるまではずっと見て来ているけれど結局私は何も出来て居ない。

孫の顔が見たいと言って来た老人が死ぬのも、明日晴れて欲しいと言って来た子供も居たけど、

何も出来て居なかった。

少し前くらいには隣り村がすでに原因不明の失踪事件多発で廃村になっていて、隣り町が廃村になる前にもその村の少年が私に何か願っていたけど、それにも応えられなかった。

それから少しして、しょうしかとか言う私が今まであまり聞いた事が無かった言葉が流行始めた頃。

私の居る森の側の村で一家殺害事件が起きて、犯人が捕まらず村から人が引っ越して行き隣り村同様に廃村となってしまう。

私はそれから本当に誰に願われる事も会ってもらえる事も無くただ数年を出る事の出来ない祠で過ごした。

でも、それからまた度々此所に人が来るようになる。

大きなカメラを持った人達と綺麗な服を来た人が来てから此所が心霊スポットとして有名になったから。

また月日が過ぎて私はあの四人と出会う。

「まぁこのまま帰るのもあれだし、それやろうぜ。」

これが私が聞いた始めての海月の声。

「よっしゃ!必要な物は全部揃っとるで!」

「準備良過ぎだろWさては、元々やる気だったな!」

八神と友輔の声

「…準備出来たぞ。真中にそれ置けよ。」

坂目の声

坂目に言われて紫水晶の置かれた魔方陣の中央に海月がオモチャのライフルを置く。

何をやって居るんだろう?と思ったのも塚の間、私は魔方陣に吸い込まれるような感覚と共に意識を失った。

目が覚めるとそこは祠の外で、私は魔方陣の上に座っていて、目の前で海月以外の三人が尻餅をついて驚いて居る。

私は自分の手を見たり足を見たりしていた。

もう何処も透けていないし触る事も出来る。でも、私には無かったはずの尻尾が生えていて、頭にはふわふわした耳も生えていた。

「まさか、成功するとは…初めまして。とりあえず立てるか?」

尻尾と耳を触って首をかしげる私を見て、海月は右手を差し出してくれた。

私が頷いて右手を両手で持つと、海月は手を引いて私を立たせてくれる。

「ありがとう。」

私は何十年かぶりに一言話した。

ちゃんと声が出たか不安だったけど、海月はくすっと微笑んだ後、後ろを見て居る。

後ろでは三人が何とか立ち上がって、海月を心配そうに見ながら近付いていた。

私がそっちを見ていると

「名前、何て言うんだ?」

海月は地面に散らばった破れた紫水晶を拾いながら訊いて来る。

私は答えようとして、黙った。

わからない。

何て名前だったんだろう?

昔祠を訪れた人達は、祠の中の私を樹霊様と言っていたけどそれは私の名前じゃないと思う。

だから素直に

「わからない。」

と言った。

海月はそれを聞いて「ちょっと待ってて。」と言って三人と何か小声で話始め、私は自分がどんな姿なのか知りたくて祠に飾られていた鏡を見る。

黒かったはずの髪は銀髪に、耳は狐のような耳。服はぼろぼろの浴衣から白くて端が水色の綺麗な服になっていて、目は碧色だった。

最後にゆらゆら動くふわふわの尻尾を見て、私は生き返った訳じゃなくて霊じゃない何かになっただけなんじゃないかって思い鏡から目を背けた。

「名前、イーナってのはどう?」

始めてイーナと言う名前を海月から聞いた時、私は外国の人みたいな名前だなぁって思って悩む。

でも、今の私の姿にはぴったりな気がして少ししてから頷いて、

「どうしてイーナなの?」

と海月に訊いた。

「君の媒体になったオモチャの銃のモデルになった実銃がMK17だかららしいよ。名付けたのはこいつ、坂目だ。俺は山野 海月よろしく。」

海月は坂目を指差して、坂目は「おい止めろ。見た目ほど安全とは限らないぞ。」と小声で海月を怒りその手を払い海月の後ろに下がる。

そんな坂目を見て海月は

「こんな可愛いのに…。」

と呟いて、その後他の二人…八神と友輔を紹介してくれた。

私は自分が何なのか誰なのかわからないけど、可愛いと言って貰えるなら今日からイーナで居ようと思う。

しばらくして四人がそろそろ帰ろうってなった時、イーナをどうするかで話合いになっていた。

坂目は

「悪いが、俺は得体の知れないものを連れて帰る気にはなれない。」

と言う。

八神は

「会社の寮男性寮やからなぁ…。」(当時はまだ会社首になってない)
と申し訳無さそうにしてる。

友輔は

「俺ん家家族と住んでるし、ほら、連れてくんだったら海月ん家とかさ。親海外だろ?」

と、海月の方を見ていた。

海月は

「分かった分かった。ここに置いてく気は無いからな。まぁ媒体に使った銃も俺のだし。イーナ、一緒に暮らそう。」

そう言って私の手を引く。

この日から、私はイーナになって海月と暮らすようになった。

これからお話しするのはイーナの見て経験した出来ごと。

一話「憑物」

一話『憑物』

イーナは眠らない。眠くならない。

眠らない子は大人になれないと世間では言うみたい。

それは少し違うけれど本当だと思う。

正確には眠れない子。

イーナの身長は一年で一ミリも変わっていない。

知識はいくらでも覚えられるけれど、果たして身体が大人にならないイーナはどれだけ学べば大人なんだろう?

大人として仕事を持つ海月が眠りについた頃。

ベランダに座り、小さなアイポットナノで彼への自分の気持ちに一番近い歌詞の曲を探して歌った後、革製の鞘のついたナイフを眺める。

私で居た頃より狐の耳を持つイーナで居る今の方が歌も声もより聞き取れるようで、音程を覚えるのは簡単みたいだ。

今日は私からイーナになって丁度一年になる日。

このアイポットナノも、ナイフも、その記念のプレゼントだと海月達は言っていた。

鞘からナイフを抜くと、ナイフの先が月の光を反射して光る。

「れす…きゅー…ばい…ぶる?」

ナイフの根元に何か英語が書かれているけれど、英語をほとんど学んで居ないイーナにはその意味がわからない。

でも、このナイフは海月も持っていてお揃いなんだって事は知っている。

何度も海月に内緒で海月のナイフを借りた事があるから。



海月の家で暮らし始めて二ヶ月くらいした頃。

海月が高熱で寝込んでしまった。

イーナは覚えたての御粥作りに挑戦したりしながら海月に声をかける。

「海月、どうすれば良い?どうすれば海月は元気になるの?」

あの頃のイーナには今の世の中の知識がまだまだ足りなくて、薬局の場所も薬の種類もあまり知らなかった。

それでも海月が常備していた薬箱から風邪薬を探して海月に飲ました。

それでも熱は下がらない。イーナは焦りながら何が出来るか考えていた。

携帯電話はまだ海月が使っているのを見た事しかなくて使い方もわからない。

「うぅ…い…な…なに……いる…」
海月の声を聞いて台所から寝室に戻ると海月は意識を失ってしまっていて、イーナはその時初めて何が海月が高熱を出す原因になっているのかに気が付いた。

私だった頃と同じようにイーナの目でも人や物を通り抜ける透明な人型や、動物のような変なものが見える。

イーナではなく自分を私としてしか認識して居なかった頃、あれがたまに生きている人にくっついて何かしているのを見た事がある気がする。

まだこの頃海月達にはこれは見えていなかったみたいだけれど、海月の枕元に立つ透明な喪服の女の人が原因なんじゃないのかな?

その喪服の女が意識を失っている海月の身体に手を突っ込んで居る。

気が付いたらイーナは喪服の女に体当りをしていて、ぶつかる感覚がした後すぐに払いのけられて箪笥に頭を打ってしまった。

痛い。すごく痛い。

成長出来ない小さな身体は今より強い衝撃を受けたらきっと壊れてしまう。

それは嫌。涙が出そう。

でもすぐに立たなきゃ海月はきっとあの喪服の女や、昔の自分と同じように死者になってしまう。

きっと海月はそれを望まない。

'可愛い.そう言う海月。

'イーナ,そう呼んで自分が何か教えてくれる海月。

イーナは手に力を込めて膝を立てる。

イーナと呼んでくれる人が居なくなったら、きっとまた居場所が無くなって彷徨い歩く事になるんだろうな。

あの広い森で、私として彷徨っていたあの頃探していたのは'人間じゃなくなった自分の側に居てくれる人,だったんじゃなかったっけ?

さらに力を込めたら立ち上がれた。

イーナがぶつかった衝撃で、箪笥の小さな引出しが開いてしまっている。

その中から革製の鞘に入ったナイフを手に取り、鞘からナイフを抜いて走り喪服の女に突き立てた。

「うぅぅぅぅ」

喪服の女が唸る。

それでもイーナはナイフを握り、より深く力を込めて刺す。そして力が緩まないように叫ぶ。

「私はまだイーナで居たい!呼ばれたい!だから」

体重を手元に乗せて全身を使って刺したままさらに叫んで捻る。

「邪魔しないで!」

人型を維持しきれなくなった喪服の女は消えていく。

きっとあの女の霊も居場所が欲しかったんだろうな。

でも、無いから作ろうとしたんだ。

生きてる人を殺して自分と同じにする事で居場所を作ろうとしたんだ。

一人は寂しいな。

「…イーナ、何か凄く疲れて喉が渇くから水持ってきて。」

ナイフを握ったまま呆然と立ち尽くすイーナを、いつの間にか気が付いた海月が呼んでくれる。

イーナはナイフを咄嗟に隠して

「わかった。待ってて!」

と、応えて寝室から出てナイフを鞘に入れる。

そのナイフを服の中にしまうとイーナは台所に走った。



思い出に浸るのを止めて、イーナは服の中に隠していた方の海月のナイフをこっそり箪笥に戻す。

長い間借りていてごめんなさい。

そう心の中だけで寝息をたてる海月に謝って、箪笥の隣りにあった本棚から英和辞書を開く。

れすきゅー。意味は救助。救出。救援。

ばいぶる。意味は聖書。権威ある書物。

英和辞書を元の場所に戻してベランダに戻ると、庭に老人の顔をしたシーズーが居た。

その人面犬はイーナを見ると「お、居た居た。」なんて言いながら笑顔で器用に右前足を使い手招きする。

「チョコ、予知のとおりになったよ。」

イーナはベランダに座り、人面犬を見る。

イーナにチョコと呼ばれた人面犬はイーナのすぐ前まで歩いて来てお座りをしてた。

ベランダに乗らないのは、外を歩く犬として人の住む家を汚さないというプライドがあるからみたい。

チョコとは初めて海月の家に来た日の夜に出会った。

チョコはこの辺り一帯を縄張りにしていて、他の人面犬を入って来ないようにしたり、監視したりしている。

チョコの飼主は時々本人に関係無い予知夢を見るらしく、チョコはそれを関係ある人に伝えてお礼を貰うのを楽しみに生きて(死者だけど)いるらしい。

昨日はイーナに海月が怪異に遭うと伝えに来たから、そのお礼を貰いに来たんだろう。

「うんうん、じゃが腑に落ちぬ顔をしている所を見ると何も出来なかったか。眠そうな目をしてるのはいつもの事じゃが。」

チョコはイーナを心配するように、困ったような表情でこっちを見て言った。

「うん。海月と一緒に居た巳竹が上手くやったから…。イーナは巳竹が嫌い。巳竹は狂ってるくらい心霊体験が好きだから、きっといつか海月を死に近付ける。」

イーナが溜息を吐きながら話すと、チョコは苦笑いして前足で頭を掻く。

そして諦めたように

「じゃあ今日は歌でも聴いて帰るとしよう。何か歌ってくれないかい?」

と、言って垂れた耳を動かしていた。

(BGM:クワガタP×buzzG 防衛本能)

二話「海月とイーナの休日の日々 前編」

二話『海月とイーナの休日の日々 前編』

今日は海月の仕事はお休み。

だけどイーナはいつものように時間が来たら、二階の寝室で眠る海月を起こしに行く。

不愉快な事に三日後の次のお休みは巳竹と一緒に三人で遠出するみたいだけれど、今はそんな事忘れてしまおう。

今日は一緒に二人で外出する約束だから。

階段を上ってすぐの部屋が海月の部屋。隣りは居候している八神の部屋。

八神は正社員のお仕事も予定も無いから起こさなくて良いらしい。

不景気って大変。

イーナはこの時代に人間やってなくて良かったって唯一思える事かも。

ベットの上で目を瞑る海月を両手で揺すって声をかける。

「海月起きて。もう7時。」

これでは起きない。

いつもの事。

ベットによじ登り、布団越しに海月の上に乗って揺すりもう一度声を張り上げる。

「海月、起きて!朝御飯も出来た!冷めちゃう。」

海月は「うぅ…」と小さく呻いて、ゆっくり目を開けて手で顔を擦ってから

「おはよう。イーナ、そこに居られたら起きれないぞ。」

と、笑う。

イーナも笑って「おはよう」って言って、降りた後いつもより大袈裟に尻尾を降って先に部屋を出て階段を降りる。

そして、台所に用意した朝食を持ってリビングに運ぶ。

後を追うように海月が降りてきて、イーナの側に座る。

イーナはテレビのリモコンを探して、机の下から見つけたリモコンの赤いボタンを押してまずアニメがやってないか番組表で確認。

私としての自我に気付いて自分が死んで居て幽霊だと分かった頃には、まだテレビなんて無かったからこれを見るのは結構楽しみだったりなんかする。

でも、海月は見飽きたとでも言うようにテレビから視線を外して二階の部屋から持って来たノートパソコンを開く。

あれはえいすーすと言う台湾の会社が作った物らしいけど、イーナには日本製も台湾製も違いがあまりよく分からない。

とりあえずイーナに重要なのは、あれはイーナが使おうとすると怒られるって事。

特に、eroって書いてある物は見ちゃいけないらしい。見たらダメな大人になるとか。

でも、二階のデスクトップパソコンはイーナが使っても許される。

だから海月が仕事で居なくてどうしても暇な時は、二階のパソコンでアイポットナノに音楽を新しく入れたり、らてーるせかんどしーずんで架空の世界を冒険して遊ぶ。

でも、らてーるはねとげだからやり過ぎると廃人になってダメな大人になるって言われた。

海月が仕事で出かけようとした時、イーナが何度も付いて行こうとしたら海月に困った顔をされてしまったから、今ではもう付いて行かないようにしている。

本当は、寂しいし心配だから付いて行きたい…。

だからイーナにとって、海月の休日はとっても大切で嬉しい。

海月は仕事なんか止めてせーかつほごとか言う物を貰えば良いのに。そう言えば、八神はどうしてせーかつほごを貰わないんだろう?

イーナがそんな事を考えつつアニメひきょうせんたいうろたんだーを見ていると、海月はご飯を食べ終わって「ごちそうさま」と言いながら頭を撫でてくる。

今日の朝食は赤味噌の蜆汁とサーモンのホイル焼きにしてみたけど、どうだったかな?

海月は和食はあまり好きじゃ無さそうだけど…。

イーナの不安を知ってか知らずか、海月はいつものように

「おいしかったよ。」

と、言ってくれた。



目まぐるしく変わる景色と、スピーカーから響く曲。

(BGM:いとうかなこ 空の下の相関図)

揺れる車内。

海月が運転する四駆の軽自動車から見る景色は、普段背の低いイーナでは見る事が出来ないものが見えて楽しい。

隣りを見るとハンドルを握る海月は普段家で見る時より少し真剣な表情をしていて、ちょっと凛々しく見えた。

しばらくすると外を見るのに飽きて来て、欠伸をして椅子に深く座り直す。

「今日は何処に行くの?」

尻尾の毛を頬に当てながら訊くと海月は前を向いたまま

「デパートだ。冷蔵庫も空だし…。イーナも服とか選びなよ。」

と、応える。

イーナは人間じゃないから、汗もかかないし服はほとんど汚れない。

息だって声を出す時や、人の仕草を真似る時しかしなくても大丈夫。

本当、イーナは化物みたいだ。

でも、海月はイーナを連れて買物行く時には必ず'服とか選びな,なんて言ってくれる。

「稼ぎは良くないから高級ブランドは無理だけどな。」

イーナが何も言えず尻尾を触っていると、海月はそう言って笑った。



広い駐車場に着いて、ドアを開け車から降りる。

このじむにーと言う車は車高が高くて、イーナは飛び下りるように降りるのが少し楽しみ。

「いつもそれやるけど、なんか心配になるなぁ。怪我するなよ?」

先に降りている海月が心配そうに見て言う。

外は暑くて、太陽に照らされて遠くのアスファルトの地面には蜃気楼が見える。

「海月、イーナは海月が思ってるほど子供じゃない。バランス感覚には自信ある。尻尾でバランスがとれるから、海月よりこけにくい。」

駐車場を歩き、車止めの上で両手を広げてポーズをとって自信満々でイーナが言うと海月は

「なるほど、尻尾か。便利だなぁ。」

と、言いつつイーナの尻尾を見た。



デパートの中は人が沢山居て、たまにイーナを見て不思議そうにしている人も居る。

耳と尻尾が狐みたいでしかも目の色と髪の色が日本人と違うからだと思う。

たまに人じゃないものが人込みに混ざって歩いているけれど、ぱっと見では海月に何か悪影響になりそうなものは居ないみたい。

多分あの生きてない人は生前このデパートが好きだったんだろうな。

しばらく歩くと海月はアクシーズと書かれたお店の前で立ち止まり、

「ここの服とかどう?」

と訊いてきた。

良くわからないけど、ロリータとか言うジャンルの服なんだと思う。

「…可愛い。」

そう応えて店内を見渡す。

でも何でロリータ?

あぁ、海月はこういうのが好きなのかな。

刺繍入りハイウエストスカート(4935円)を見ていると少し背が高い茶髪の綺麗な店員がやって来て、イーナの後ろに居た海月に

「妹さんですか?可愛いかっこうしてますねー。コスプレか何かですか?」

とか訊いていた。

海月はちょっと困ったように

「え、いや、まぁそんなとこです。」

とか応えて居る。

下手な嘘だけど、笑顔でさり気なく海月の手に触れたりしている店員はかなり馬鹿そうだから多分ばれない。

…後で海月と手を繋ごう。

イーナはハイウエストスカートと組み合わせる服がお店の中央に置かれたカタログに書いてあるのを見て、サイズの合う服を探して揃えた。

店員はそれに気が付いて、

「あ、試着してみます?」

と訊いて来る。

馬鹿そうだけどサービスは良いみたいだ。

試着室に入り、カーテンを閉めるとイーナはまず赤い首輪と髪を結んでいるリボンを外す。

首輪は外すと一瞬で、キスマークと赤い英語の文字で書かれたスリングに変わる。

何故か首輪だけ、外すとスリングになる。いつもの事だけど不思議。

これはイーナの媒体の銃Mk17の装備品。キスマークは本来スノーボード用品のメーカーらしい。

もしかすると、イーナは力を上手く制御すると媒体の銃の姿になれる…?

例えば、海月に触れている時に身体に力を半分海月に移したりしたら…。

考え事をしながら服を着替えていると、思ったより早く着替え終わり試着室の鏡を見た。

これは…。これなら海月を独り占め出来るかもしれない。

イーナは背が低いけど、幼い見た目だからこそこれを着こなせる。

最初に見ていたスカートと、襟2WAYスパンドビーブラウス(3990円)と、蝶&バラ刺繍カーデ(3990円)

カーテンを開くと海月と眼が合った。

前で待っていたらしい。

海月の隣りで海月に話かけていたあの店員も、イーナを見て固まった。

少しして頬を朱に染めた海月はイーナに指差しながら、首だけ店員の方を向けて

「あ、あれ下さい。」

と早口で言い、店員もその声を聴いて慌てて

「は、はい!分かりました!」

と応えてレジに向かう。

今日は良い日になりそうだ。

三話「海月とイーナの休日の日々 後編」

三話『海月とイーナの休日の日々 後編』

元の服に着替え直して、アクシーズを出た。

海月は

「思ったとおりだ。イーナはひらひらした服が似合うな。」

って笑って、紙袋を持っていない右手で頭を撫てくれる。

…洋服の値段、合計で一万超えてた。

海月にどれくらいの稼ぎがあるのかイーナは知らないけど、昔でも今でも一万円は高価な気がする。

「…ごめんなさい。」

申し訳なくなって、そう言って少し俯いた。

買物に関しては海月に頼りっぱなしになっている。

「イーナは俺達、八神や坂目、友輔の好奇心で、イーナの都合に関係無く造られたんだから謝らなくて良いよ。」

俯くイーナに微笑み、少し申し訳無さそうな表情で海月は言った。

違う。違うよ海月。

イーナになる前は祠から出れず寂しくて、とても困っていて出たいと思っていたから。

でもこれは海月は言えない事。

言えばきっと不気味だと、化物だと思われてしまう。

だから

「…ありがとう。」

そう言って、笑って海月の手をとり歩く事しか出来ない。

少し歩くと正面に中古ショップの入口が見えて来て、通路が左右に分かれている。

左に行くと外だから右へ歩く。

しばらく歩いて登山用具が売っている店を過ぎ、また右へ曲がるとエスカレーターが見えて来て、それを使って二階へ上がる。

エレベーターもあるみたいだけど、デパートに来る時は海月はいつもエスカレーターを上がってすぐ近くにある本屋に立ち寄るのが正解。

本屋で海月があーむずまがじん(何か銃の写真がいっぱい載ってる)を立ち読みしている間、イーナは漫画を見に行く。

漫画は種類が多くて探すのが大変。

「まど…か…あ、あった。」

少し背伸びをして目的の漫画の新刊を取り、雑誌コーナーに戻ると…あれ?海月が居ない。

慌てて店内を探すと、隣りの別の雑誌コーナーに居た。

「海月!」

イーナが呼ぶと、海月は慌てて雑誌を閉じて本棚へと戻す。

一瞬雑誌の表紙にLOって書いてあったのが見えたけど、何の雑誌だったんだろう?

「お、おぅ。新刊見つかった?」

何事も無かったかのように訊いてくる海月をちょっと不審に思ったけど、

「うん。これ。」

と応えて持っていた漫画を差し出す。

家にある漫画はもう全部読んでいるから、海月が探している続きの新刊は全部分かる。

「ありがとう」と言って受け取りレジへ向かう海月を見送っていると、ふと隣りに同じくらいの背の少女が立っている事に気付いた。

驚いてそっちを向くと、頭にブルーベリーソースのチーズのような帽子を乗せた少女は嬉しそうに

「お揃いだね。」

と、言ってくる。
「お揃いって?」

何の事か分からずに訊くと、

「君はスカーヘビーMk17でしょ?私はPX4サブコンパクト。人じゃないの。それに、私も好きな人と買物に来てる。ね?お揃い!」

その場で回って黒いスカートの端を摘んでポーズをとり、そう言って見せた。

声も出せず驚いていると、眼鏡をかけた少し頼りなさそうな少年が慌てた様子でやって来くる。

「ピクシー、ダメだお!勝手に一人で行っちゃ。ただでさえ目立つかっこうしてんだから。」

少年はピクシーと呼んだ少女の手をとり、少し不思議そうにこっちを見た。

それに気付いたピクシーは

「私と一瞬なんだよ!他にも居たんだね銃精!」

と、少年に説明する。

少年はそれを聞いて

「ま、マジかお!?って、んなわけねーお!お前自分が都市伝説並に現実離れした奴だって自覚無さすぎだお。ほら、早く行くお。」

とか騒ぎながらピクシーを両手で掴んで、引きずって本屋を出て行った。

引きずられながらピクシーは「嘘じゃない~!銃精仲間~!」とか叫んでかなり辺りの視線を集めてしまっていて、イーナはそれがちょっと心配になった。

「どうした?」

って声で我に返る。

海月が買い終わった本の入った袋を抱えて隣りに立っていて、しゃがんで私の顔を覗きこんでいた。

「な、何でも無い。大丈夫。」

何とかそう声を出して、イーナは海月の右手を握る。

それを見て海月は、

「そっか。…なぁ、そろそろ昼飯にしようぜ。」

と、笑った。



なごやといっえばーすっがきやらーめん♪

テレビCMを思い出す。貧乏舌だと言われるかもしれないけど、イーナはこの行った事も無い知らない名古屋と言う土地の味が結構好き。

「イーナ、は安上がりで助かる。」

特製らーめんに息を何度も吹きかけるイーナを見て、海月は申し訳無さそうな顔で言う。

別に遠慮してスガキヤ選んだ訳じゃ無いんだけどなぁ。

「これ、おいしいよ?」

数枚の薄いチャーシューを食べながら言うと海月は

「まぁうん。そうだな。スガキヤは学生時代よく食ったよ。」

なんて言って美味しそうに自分のらーめんを食べる。

熱そうだ。

そうだ!ドラマとかだとこういう時、

「海月、ふーふー…はい。」

実行してみた。

イーナのらーめんを吹いて冷まし、スガキヤ独特の赤い箸で麺を海月にそう言って突き出す。

何だか恥ずかしい。

海月も同じらしく、かなり戸惑った様子で頬を赤くしながら食べた。

「あ、ありがとう。いや、イーナ、ダメだぞ。こう言うのは…」

保護者としての説教、とでも言うような事を言いかける彼に

「海月にしかしない。」

とだけ言って、恥ずかしさを押さえるように自分のらーめんに集中する。

…熱い。アイスも食べよう。



ソフトクリーム片手にゲームセンターに入る。

(BGM:ryo初音ミク メルト)

ゲームセンターでは太鼓のゲームを高校生らしい少女がプレイしていた。

この曲はそのゲーム機から聞こえてるみたい。

「上手いなー。ミス無いんじゃないか?」

海月も少しその少女を見てそう呟くと、縫いぐるみの入ったクレーンキャッチャーに向かって歩いていた。

慌てて海月の後を追う。

もうBGMは聞こえない。クリアーしたらしい。

さっきまでゲームをしていた少女はイーナを見て微笑んでいたけど、とりあえず海月の後を追う事にした。

海月はクレーンゲームの前に立つと真剣な顔で縫いぐるみを見る。

イーナにはよく分からないけど、どうも狙いがあるみたいだ。

百円玉が投入され、1のボタンが押されるとクレーンが横に動き、2のボタンで縦に動き、アームが下がる。

熊の縫いぐるみの足端にアームが掛かった。あれじゃ持ち上げられないんじゃ…

そう思っていたら、足を持ち上げた熊の縫いぐるみはバランスを崩して転げ、穴に落ちる。

「お、やったな。」

海月は控え目に喜び縫いぐるみを取り出すと、

「さっき買った服に合いそうだろ?はい。」

そう言ってソフトクリームを食べ終わったイーナに茶色の毛並みで赤いリボンをつけた熊の縫いぐるみを差し出した。

「え…いいの?」

驚きながらも、熊の縫いぐるみを受け取る。

まるでデートみたいだ。

嬉しくて縫いぐるみを抱き締める。

でも、

「そろそろ帰るか。八神も待ってるだろうし。」

その一言をついに海月が言う。

嫌だ。まだ二人だけで居たい。

でも、わがままを言えば海月はきっと困ってしまう。

だから素直に

「うん。分かった。」

明るく応えて、手を繋いだ。





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