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三話「17にできる事(邪視 後編)」

酸ヮ『17にできる事(邪視 後編)』

巳竹は何か呟きながら涙を流し、それを拭うでもなく自身の首を絞めようとしている。

俺は慌てて巳竹の方に走り巳竹の両手を掴んで動きを封じた。

「お、おい!何やってんだ!?」

思わず声を荒げて言う俺の目を巳竹視点の定まらない目をして

「死にたい死にたい死にたい死なせてください死に…ころ…殺し」

と呟き続けている。

両手を掴んだまま大声をかけて

「しっかりしろ!」

肩を揺らしてみても巳竹は呟くのを止めただけで泣き続けていた。

「海月!巳竹はしばらく動けない。下を向かせて、話を聞いて。」

声をかけられて驚いて振り向くと、イーナがすぐ後ろに居た。

白い化物はさらに近付いて来て居る。

「見ちゃだめ!見たら巳竹みたいになる。」

白い化物の位置を少し確認しかけただけだったが、イーナは真剣に怒り俺の右手を両手で掴んで言う。

続けて今度は落ち着いた声で

「今から、私は媒体の姿になるからちゃんと持って引金を引いて。位置は私が言う。目は開かないで。もし見てしまったら、巳竹と海月は生物じゃなくなる。」

そう言いながら俺の目を覗き込んでくる。

目が合った一瞬の出来事だ。

俺の震える手を握る幼い手はプラスチック製のM4タイプグリップに変わり、見覚えのあるカスタマイズが施されたMk17スカーヘビーライフルがその重量で俺の手の震えを物理的に止めていた。

17を構えて化物目掛けて目を閉じて撃てと、そういう意味か。

久しぶりに握る電動ガンは重い。

いや、実銃同様ハーフメタル(銃の半分が金属、もう半分が強化樹脂やプラスチックの物)なはずだから重く感じるのは命が懸かっているからだ。

震えて銃を落とさないよう大声で

「装填!構え!」
と言いながらストックをしっかり肩に押しつけて目をつぶり構える。

誰かに見られていたらきっと変人に思われていたに違いない。

握る銃は冷たく、その冷たさが銃から離れ身体を包む感覚がして思わず目を開こうとすると耳元で

「ダメ我慢して。」

イーナの声がした。

「フルオートに切換えて、銃を左に少し下向きで構えて。すぐ撃ちながら右に銃を振って。」

またイーナの声が言う。

近くで何か呪文のような言葉を言いながら近付いてくる存在の気配がして、俺は慌ててイーナの指示どおり親指でレバーを押しカチカチと2度音がしたのを確認すると左下から右へ引金を引きながら銃を振った。

「イギャゥアァああああ!!」

次世代電動ガン特有のボルトが前後する音と弾が撃ち出される音に混じって、肉がはじける音と叫び声が聞こえる。

しばらく呆然としていると、前方から

「もう良い。終わった。」

と声がして目を開くと右手には銃のグリップではなくイーナの手が握られてていた。

・・・

帰りの電車の中、巳竹はスマートフォンを弄りながら

「あれって邪視ですよね。」

と呟いていた。

邪視とは、見ただけで人を殺せる者の事を指す。

昔のアニメの設定にありそうな話だが、怪談としても有名だ。

「邪視…俺が祓ったのか…?」

俺は椅子に持たれるように座りながら、俺は膝の上に座るイーナに訊く。

イーナは自身の尻尾を掴んで頬擦りしながら

「うん。私だけじゃ祓えてなかった。身体を銃に戻す為に海月に半分憑いたけど身体大丈夫?」

うれしそうに、しかし心配そうな声で答えた。

銃を握ったいた時の身体の冷えは、イーナが半分憑いていたからだったのか。

人でも霊でもない中途半端な存在だからこそ、半分憑くとか出来るんだろう。

しかし、銃とはいえ威力規制で人肌に痣すらつけられるか怪しいような威力しかないもので化物なんて祓えるものだろうか?

「身体は何とも無いが…不思議だ。BB銃でどうやって祓ったんだ?」

流石に疲れて眠くなりながら言う俺の言葉を聞いて、イーナは

「良かった…。初めてやったから私にもよく分からない。説明出来ないけど弾の威力は身体に力をいれる時と同じみたいに自由に出来る。」

安心したように落ち着いた声でそう応えた。

隣りを見るとスマホで怪談検索するのにも飽きたのか、巳竹はノート2冊を枕にしながら静かな寝息をたてている。

しばらくすると電車は駅に着いた。

辺りを見ると、斜め左前のスーツ姿のいかにも社会人なりたてのサラリーマンといったような人の膝の上に小学生低学年くらいの男の子が座っている。

男の子が不機嫌そうな顔をしてこっちを見ているのが気になったが、俺は

「着いたぞ。」

と言いながら巳竹を揺すって起こし電車を降りた。

降りる直前男の子の前をイーナが通る時男の子の声で

「折角簡単に連れていけそうだったのに…」

と言いう声が聞こえ、イーナが小声で

「あげない」

と言っていたのが気になった。

煮話後日談『17とナイフ』

この日の夜はなかなか寝る事が出来なかった。

言うまでもなく、恐怖体験のせいなのだが。

特にやる事も無く一階の台所の冷蔵庫を開けて麦茶をグラスに注ぎリビングを見ると、明かりをつける事も無くベランダに座り耳と尻尾を風に揺らす後ろ姿が見えた。

「イーナ、お前も寝れないのか。」

声をかけるとこっちを振り返り

「眠くならないから。」

と少し困ったような表情で言う。

ナイフを握っていたとは思えない幼く小さい手には、刃の折れたナイフではなく緑色の小型スピーカー付き音楽再生機が握られている。

隣りには革製の短い鞘と、いつ拾ったのか折れた刃とナイフの柄がポンチョのような羽織り物に包まれて置かれていた。

「折角貰ったのにもう折っちゃった…。」

イーナは少し俯いた暗い表情で言う。

「そんな落ち込む必要ないと思うぞ。そのナイフと同じ型のやつ、俺も二本持ってるし一本やるよ。守って貰ったしな。」

そう言いながらリビングのタンスの引出しを探ると二本とも見つかった。

このサバイバルナイフは小学生だった頃に基地ごっこの集まりで、仲間の証しとして八神が「5人で持とう!」とか言い出して渡して来た物だ。

イーナに渡したのも少なからずあの時と同じそう言う意味が込められていたんだろう。

革製の鞘と刃の付根にはRESQVIVAL(レスキューバイバル)と書かれていて、刃の付根の方にはさらにSCOUT(スカウト)と書かれている。

5人のうち4人は俺を含めイーナと出会ったきっかけを作った人だったわけだが、後一人は誰だっただろうか?

思い出せない後一人の物であったナイフが、どういう訳か今俺の手元にある。

そのナイフをイーナに渡して隣りに座ると、イーナは小さく

「ありがとう。大事にする。もう折らない。」

と言った。

ベランダから見える夏の夜空には星が多く輝いている。

空気が綺麗で町の明かりが少ないな田舎ほど星空は輝きを増すというのだから、この町の田舎っぷりはなかなかのものらしい。

イーナは隣りで音楽再生機のタッチ画面を操作している。

「良ければ何か歌ってくれないか?一曲聴いたら寝る事にするよ。」

俺のお願いをイーナは頷きで応えて、小さく息を整えた後歌い始めた。

(BGM 君の知らない物語)
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