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五話「敵討ち(ウブ後編)」

誤輪『敵討ち(ウブ後編)』

階段は思ったより長かった。

頂上付近に到着し、坂目のフラッシュライトの明かりが辺りを照らすと慰霊の森と刻印された石碑が見える。

「海月。」

イーナに呼ばれて俺が隣りを見ると、イーナは俺の目を見つめて来た。

寒気がして緑色の瞳から視線を逸らせなくなり、繋いでいた左手に重みを感じる。

邪視の時と同じようにイーナは銃に姿を変えた。

「寒!?…何とかならないのかこの寒さは…。」

俺が溜息混じりにそう言って銃を見ると耳元で、イーナの「…それは無理。我慢して。」と言う声が聞こえる。

「お前…狐の耳と尻尾が生えてるぞ。その銃はイーナの媒体だな…。」

坂目は驚いた表情をしてこっちを見て来たが、少し考えた後「あぁ、私を使ってってのはそう言う意味か。」と何か納得した様子で呟いた。

狐の耳と尻尾か。

確かに後ろを振り返ると、少し揺れる毛の塊のような物が一瞬見える。

しかしまぁ、狐耳男子なんて誰得なんだ?

そう思いながら銃をしっかり構えて、マウントレイルに搭載されたミニダットサイトのカバーを外す。

スイッチをオフからオンに切替えると、緑色の点がガラスで出来たレンズに写される。

ふと気がつくとそこそこ近い距離で赤ん坊の泣声がした。

八神はびくっと身体を震わせ、坂目は冷静に声のした方をライトで照らす。

休憩所の方だ。

休憩所の中で何か大きなものが動いている。

耳元で「居た!狙って!」と声がして、俺はその大きなものに狙いを定め引金を引いた。

モーター音と共に6ミリ弾が撃ち出され、捉えたかと思ったが大きなものは驚くほど素早い動きで弾を交わしてこっちを見る。

蜘蛛の身体、赤子の顔。その顔が笑顔でこっちを見て、走って来た。

「化物め!」

そう叫びながら俺はひたすら引金を引くが、ことごとく交わされてしまう。

こちらに到達するまで後10mに迫って来た所で、坂目が目で合図をして来た。

「お前の母親はこれだっ!」

合図の後すぐに坂目はそう叫びながらライトを左前に投げる。

ウブはすぐにそれに反応してライトの方を向き、俺はその隙にダットサイトの標準を定め引金を引いた。

「やったか!?」

思わずそう言った俺の頭を坂目は平手で叩いて

「その台詞はやってないフラグだろ!止めろ!」

と怒鳴る。

ごもっともだが、暴力反対だ!

今度は命中したが、胴体に大きな穴を空けたままウブは奇声をあげこっちを見る。

まだ動けるようだ。

耳元で「まだ弾はある。疲れてもない(バッテリー残量もある)からフルオートを使って。」とイーナの声が言うと同時に、セレクターを切替え引金を引き続けた。

・・・

終わった…

長い階段を降りながら右手を見ると、もう銃のグリップはそこには無くて変わりにイーナの小さい手が握られている。

「どうかした?」

繋いだ手を見ているとイーナは不思議そうにこっちを見上げて訊いてきた。

「いや、何でもない。フルオートの振動がまだしてるような気がしただけだ。」

俺がそう答えると、イーナは

「早く慣れた方が良い。」

と言い右手を両手で抱くようにして身体を寄せて来て前を向く。

「それにしても、海月があいつを撃ち消した後振り返った時はマジでビビったぜ。」

すぐ後ろで坂目が笑いながら言う。

「な、何や!しゃーないやろ!あんな化物見たんやで!?普通の反応や!」

俺と俺の腕にしがみつくイーナの隣りで、八神は顔を真っ赤にして怒った。

だが、確かにあれは酷い。

「死ぬか殺るかの戦いの後、振り向いたら白目むいて立ってるとか怖すぎだろ。憑かれたのかと思ったぜ。」

俺はただただ事実を言う。

まぁ何にせよ憑いたわけじゃ無くて良かった。

階段を降りきる直前、見知った人が下に立って居るのが見えて俺達は足を止めた。

そいつはまるで「よぉ!」とでも言うかのように軽く片手を上げて、

「無茶すんなよな。心配で逝けねぇじゃん。」

とか言って来る。

だがイーナは友輔がそこに居るのを知っていたかのように

「敵はとった。友輔、これで未練は無いはずだから逝けなくなる前に逝った方が良い。」

と言いながら俺の腕にしがみつく手の力を強めた。

一瞬イーナの緑色の瞳が透けた身体の友輔を睨んでいるようにも見え、俺は少し動揺したが友輔は

「おいおい、止めろよ。連れてったりしないって。お前ほんと海月の事好きだな。」

と笑顔で言って「じゃあな」と言いながら消えてしまう。

最後に耳元で「たまにはお参り、来てくれよ」と言われた気がして俺は辛くてしばらく涙が止まらなくなった。

すぐ隣りからも泣く声がして、きっとあの時八神も坂目も泣いてたんだと思う。

帰りの駅に着く頃には空はすっかり明るくなっていて、俺達は始発の電車で帰路へと着いた。

四輪後日談『墓』

家から徒歩30分くらいの場所に家の母方の祖父さんと祖母さんの墓がある。

その隣りの土地に友輔の墓は建てられた。

花は何が良いか分からなかったが事前にイーナに初めてのお使いとして墓参りの花を選んで来てくれと頼んだら、スーパーの店員がそれっぽいのを選んでくれたらしい。

田舎のスーパーの店員は親切だ。

ズボンの後ろポケットから普段あまり使う事のないジッポを取りだし線香に火を点け、軽く息を吹いて墓に供える。

友輔の姿は見えない。

成仏したのか友輔家に居るのかはわからないが、とにかく本人が居ないのに線香を供えても意味無いと言いたげにイーナは欠伸をしている。

だが俺は

「手合わせて一応拝むぞ。」

とイーナとここに居ない友輔に言って手を合わせた。

二日前に行った慰霊の森と違い目を閉じると蝉の声と風の音がより大きく聞こえる。

「帰りにアイスクリームが食べたい。」

手を合わせるのをさっさと止めたイーナはその手で俺の服を軽くつまんで、そうせがんで来た。

「そうだな。アイス食ってさっさと帰るか。」

そう言って歩き始めると墓はあっと言う間に見えなくなった。

・・・

コンビニの前の日陰に二人で立ちながら期間限定のプリンソフトを食べていると携帯が鳴る。

俺の携帯はガラケーとか言われる旧式で最近流行のスマートフォンでは無い。

もうこの携帯とも三年の付き合いだ。そろそろ買い替え時かもしれないな。

片手で携帯を開き画面を見ると八神からのメールが受信されている。

「八神、ついにフリーター卒業か。」

メールの内容を見てそう呟きくすっと笑う俺を見て、イーナも嬉しそうに笑った。

(BGM:岸田教団&THE明星ロケッツ  literal world )
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