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六話「霊の居ない家(創造される者前編)」


録わ『霊の居ない家(創造される者前編)』

「うちの実家行こか!」

休日の朝、俺が珍しく二連休をとる事に成功したと知った八神は突然そんな事を言い出した。

八神の家は昔は近所にあったのだが八神の母方の祖父さんが亡くなってからは、一人残された祖母さんと暮らす為実家に両親が住む事となり、その時売り払われている。

つまり八神の実家とは祖母さんの家であり、その場所は遠い。

「えぇ?今からか?」

俺はイーナの焼いた卵焼きを食べながら、わざと不機嫌そうな声で訊く。

八神は昔から俺の家に遊びに来る事や外で遊ぶ事が多かった為、八神の家に最後に行ったのは八神の祖父さんの葬式の時だったはずだ。

「二連休なんやろ?行くなら今日しかあらへん!転職(両親にはしばらくフリーターだった事は内緒)した事も報告せなあかんしな。」

八神はどや顔でそんな事を言っているが、しばらくフリーターだった上に我家に居候していた八神がやっとまともな社会人になっただけのように思えてならない。

しかも、まだ居候中だ。

「いや、そりゃそうなんだろうけど俺まで行く必要無いだろ…。」

俺はどう考えても正論を言っているはずなんだが、八神はそれに

「旅行っていうのは行ける時に行くもんなんや。イーナにももっと外の世界見せたらんと、それも作り出してしまった者の責任や。」

とかなんとか言って来る。

「…はぁ…、しょうがねぇな…。どうせなら坂目も誘おうぜ。」

俺は溜息をついて卵焼きの最後の一切れを頬張ると「うまかった。」と言いつつイーナの頭を撫でた後、携帯を開いた。

・・・

最近は旅行鞄と言うと底にタイヤの付いた物が主流で、俺達が高校の修学旅行に行った時はすでに同級生の半数以上の人が箱型のタイヤ付きを使用していた。

坂目のマーチ(車)で駅まで移動し、電車で移動すること数時間。

俺達が八神の祖母さんの家がある町(と言っても田舎すぎて村のようだが)に着いた頃にはすっかり夕方になっていた。

「座りっ放しで腰痛てぇ…」

俺がそう言うと坂目は

「修行が足りんな。コミケとサバゲー行って鍛えて来い。」

とか言ってくる。

何の修行だ。

座り過ぎで疲れている俺達と違って、イーナは景色を見る為に車内を動き回って疲れたらしく、俺の旅行鞄の上に座って休んで居る。

イーナが座ったままの状態で旅行鞄のタイヤを転がす事数十分、立派な木造家屋で出来た八神の祖母さんの家に着いた。

「お帰りなさい新兎。山野君と礼路君(れいじくん)もお久し振りね。」

八神の祖母さん(以下略して八祖母)はそう言うと、俺達が返事をする前にいそいそと「まぁ上がって」なんて言いながら部屋の引戸を開けて室内に入って行く。

山野と言うのは俺の三代治、礼路は坂目の名前だ。

「こんな所に突っ立ってないで、さっさと上がろうぜ。」

そう言うと荷物を持ち、八神も後に続く。

靴を脱ぎ散らかし適当な状態で室内に入る八神。

子は親の背中を見て育つと言うが祖母の背も見て育つようだな…

苦笑しながら俺も入ろうと靴を脱いでいると、俺の鞄を引張りながらイーナが側で

「海月。ここは極端に霊が居ない。八神の家には神主でも居るの?」

と質問してきた。

そういえば珍しく今日はあまり影のようなものや、人ではない何かを見ていない。

「いや、八神の家系には神主とか坊さんは居ないぞ。ただたんに、この辺りでは事故とかが少ないってだけなんじゃないか?」

俺はそう答えると鞄を片手で持ち上げて室内へと移動した。

・・・

広い居間では八神の両親と祖母が木製の机の側にある座布団に座りながらテレビを見ている。

先に室内に入った八神も違和感なくそこに混ざって座り、ポテチのコンソメ味を食べていた。

おい、職場変更についての話をしに来たんだろ。何和んでテレビ見てんだよ…。

画面の中では特徴的な暗い声のアナウンサーが明るいニュースを話していた。NH●のアナウンサーはいつも暗い。

居間に入ってすぐ八神の父親(以下長いので八父)が

「おぉ久しぶりだねぇ山野君と…えぇ~」

そう言いながら俺の方を見た後、坂目を見て悩みだす。

どうやらしばらく会わない間に坂目の名前を忘れたらしい。

「礼路です。お久し振りですね。」

そんな八父を見て坂目は苦笑いしながら名乗って適当に机の側に座った。

「そういえば、山野君の後ろに隠れてる女の子は誰だい?山野君一人っ子だろう?」

八父は不思議そうに俺の後ろに隠れるイーナを見て言う。

さて何と答えたものかと考えて居る最中に、

「イーナ。一年前くらいから海月と一緒に暮らしてる。海月はイーナが守る。」

とイーナ自ら答えてしまった。

思わず慌てる俺を見て八父はかなり真剣な眼で

「山野君。ちゃんとその子が最低でも16歳になるまでは待ってあげなさい。そして、女の子を守るのは男の仕事だ。守るなんて言わせちゃいけないぞ。」

とか言ってくる。

何か盛大に勘違いされてしまったが、ま、まぁ怪しまれないならこれでも良いのか…?

思わず「はい」と返事をした俺を見て、イーナは何か誇らしそうな表情で先に机の側に座る。

俺は溜息を吐いてイーナの側に座った。

・・・

夕飯を食べ一息ついた俺達は、今は使われていない八神の祖父さんの部屋に案内された。

「今は誰も使ってない部屋だから、すきに使って。ちょっと埃っぽいかもしれないけど。」

そう言うと案内してくれた八祖母は「お風呂はもう少し待ってね」と笑顔で襖を閉めて部屋を後にする。

風呂を沸かしに行ったのだろうか?

室内の正面には掛軸があり、鯉の絵が描かれている。

右の襖は押し入れか。

床には布団が敷かれているのだが、一枚足りない。

左端の布団に枕が二つあるのでイーナと使えと言う事なんだろう。

部屋の左側にも襖があり、開けると庭が見えるようだ。

「さてと…ほな、坂目と転職報告してくるわ。」

部屋を見渡す俺達を見て八神は笑顔でそう言うと坂目に手をのばす。

「馬鹿か。一人で行け。」

それを軽く交わしてあしらいながら坂目は罵倒するように言うと、俺に小声で

「お前もイーナも気付いてるだろうが、ここ、霊らしき影が一切ない。人が死んでない土地なんてこの世にゃないんだ。おかしくないか?」

と囁く。

俺も小声で

「俺とイーナもそう思ってるが、原因がわからない。居ないに越した事はないけどな。」

と応えて居ると、八神は諦めて部屋を出て襖を閉めて行った。

「そういや、八神がノートを見つけて来たのってこの家の押し入れの天井だろ。」

八神の足音が遠くなるのを聞きながら坂目は真中の布団に座り言う。

「あぁ、あいつそういやそう言ってたな。」

俺は坂目にそう応えながら押し入れの襖を開けて上を覗く。

薄暗い押し入れの天井の一部、木目に混じって雑な正方形の切傷が見える。

これか?

いや、ここは一階だ。

一階と二階の間の床にあたる場所に物が入る隙間なんてあるんだろうか?

手をのばし正方形の切傷を押すと、そこの板が外れてしまい俺は思わず

「あ、取れた…。」

と呟いた。

それを聞いて坂目は苦笑いしながらこっちを見て

「何か見つけたのか?」

とか言ってフラッシュライトを投げ渡して来る。

俺はそれを右手で受け取り

「八神がノートを見つけた場所ってここかもしれない。後で八神に聞いてみよう。…何も無いと思うけどな。ってか、このライト初めてみる型だな。新しいの買ったのか?」

そう話しながらライトを左手に持ち替えて雑な正方形の穴を照らす。

思ったより隙間があった。

よく考えるとこの押し入れの天井は、一階の天井より少し低いような気がする。

通常の押し入れはこんな構造ではないはずだから、この天井は後付けで作られた偽物なんだろう。

「凄い明るさだろ?298円の格安小型フラッシュライトだ。LEDを14個搭載している。外装は多分アルミ製だ。単4電池3本だから緊急時にもパワーソースの確保が出来る。」

坂目はそう言いながら同じ物をズボンのポケットから取り出し、眺めていた。

坂目が自身満々で言うように、14個ものLEDの白い明かりは穴の中を綺麗に照らしてくれる。

というか、眩しすぎる。あまり実用的じゃないだろこれ…。

爪先立ちをし、ライトを傾けると穴の奥に何か黒い布製の物体が見えた。

「何かあるみたいだけど、奥すぎて届きそうにないな…。」

俺がそう言うと、イーナが隣りにきて

「持ち上げて。」

と言ってくる。

俺はイーナにライトを手渡し、

「頼んだ。」

と一声かけて持ち上げた。

イーナの身体はぎりぎり正方形の穴に入り、そのまま天井裏に身体の半分以上を進ませて行く。

スカートの中の白い布が丸見えなわけだが。

本人はあまり気にしていないのか、しばらくすると足と尻尾をばたつかせながら布製のギターケースを持って降りて来た。


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