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くらげのしっぽ プロローグ

プロローグ

私の最も古い記憶の話。

何年たったのか、どうして此所に居るのかも分からなくなって居た私はただ森の中を彷徨って歩く。

何かを探している筈だけど、もう何を探して居るかも分からない。

ある日乾いた破裂音がして、振り返ると血を流した子狐が倒れて居た。

私は子狐に駆け寄って何とか助けようとするけれど、子狐はすぐに死んでしまって私の足下で透けた姿の子狐がこっちを見上げる。

私と同じになってしまったんだなぁ…と、少し悲しくなって子狐に手を伸ばす。

子狐はその手に乗って私に抱き抱えられて丸くなった。

その少し後で犬の鳴き声がして正面を見たら、毛並みの整った柴犬が私に向かって激しく吠えて居る。

その犬を追いかけて飼主と思われる中年男性が猟銃を片手にやってきて

「ひぃっ!」

私を見て悲鳴をあげると

「樹霊様(じゅだまさま)!!山の神さんが出たぞぉ!」

犬を抱え、猟銃を落として山を疾走して行ってしまう。

「これ、どうしよう?」

私は銃を拾って子狐を見ると、子狐は自身の冷たくなった身体を跨いで、私を山の下の村へと案内してくれた。



村は酷い有様だった。

畑は荒れ、道には何やら呻きながら家の壁に持たれたり、地面に突伏したままで動かない人達があふれている。

変わりに生きてない者が歩いていて、私を見て避けるように去って行く。

何度目の路地を曲がったかわからなくなり始めた頃、騒がしい声が響く家の前に着いて私と、私の前を歩く透明な子狐が立ち止まる。

そして子狐は振り返って

「助けようとしてくれたお礼だよ。間に合わなかったけど。君、生きてる人にも見えてるみたいだから面倒になる前にその僕を殺した銃を返してさっさと森に戻りな。」

そう言い残して、私を置いて消えるように居なくなってしまった。

家からは

「本当に見た!」

とか

「祟られる前に奉ってやらにゃ」

とか聞こえていて、私が玄関の戸を開けて銃を玄関に置いて行くとそこに居た十人ほどの大人全員が、目を丸く見開いて硬直している。

私は少し悲しくなって

「これ、落としてたので返しますね。」

そう言って外へ駆け出す。

私は死んで居る。

もう誰も一緒には居てくれない。

それから数日たったある日。

村からお坊さんのような人と、9人の木材を抱えた大人が森に私を探しに来た。

一人減って居たのは、多分飢餓とか疫病のせいだと思う。

お坊さんは私を見ながらお経のようなものを唱え始めて、その間に大人達はその木材を組み立てて居る。

お経を聞いて眠くなった私が目覚めた時、私は真新しい小さな祠の中に居た。

始めはびっくりして出ようと頑張って見たりもしたけど、見えない壁に当たると痛くて50回くらい体当たりしたところでもう止めようと思ってただ外を見るようにした。

それからさらに数年、数十年。

毎日誰かがお参りに来て、何かを供えて、何かを願いにやってきた。

祠から村は一望出来て、村から飢餓や疫病が無くなるまではずっと見て来ているけれど結局私は何も出来て居ない。

孫の顔が見たいと言って来た老人が死ぬのも、明日晴れて欲しいと言って来た子供も居たけど、

何も出来て居なかった。

少し前くらいには隣り村がすでに原因不明の失踪事件多発で廃村になっていて、隣り町が廃村になる前にもその村の少年が私に何か願っていたけど、それにも応えられなかった。

それから少しして、しょうしかとか言う私が今まであまり聞いた事が無かった言葉が流行始めた頃。

私の居る森の側の村で一家殺害事件が起きて、犯人が捕まらず村から人が引っ越して行き隣り村同様に廃村となってしまう。

私はそれから本当に誰に願われる事も会ってもらえる事も無くただ数年を出る事の出来ない祠で過ごした。

でも、それからまた度々此所に人が来るようになる。

大きなカメラを持った人達と綺麗な服を来た人が来てから此所が心霊スポットとして有名になったから。

また月日が過ぎて私はあの四人と出会う。

「まぁこのまま帰るのもあれだし、それやろうぜ。」

これが私が聞いた始めての海月の声。

「よっしゃ!必要な物は全部揃っとるで!」

「準備良過ぎだろWさては、元々やる気だったな!」

八神と友輔の声

「…準備出来たぞ。真中にそれ置けよ。」

坂目の声

坂目に言われて紫水晶の置かれた魔方陣の中央に海月がオモチャのライフルを置く。

何をやって居るんだろう?と思ったのも塚の間、私は魔方陣に吸い込まれるような感覚と共に意識を失った。

目が覚めるとそこは祠の外で、私は魔方陣の上に座っていて、目の前で海月以外の三人が尻餅をついて驚いて居る。

私は自分の手を見たり足を見たりしていた。

もう何処も透けていないし触る事も出来る。でも、私には無かったはずの尻尾が生えていて、頭にはふわふわした耳も生えていた。

「まさか、成功するとは…初めまして。とりあえず立てるか?」

尻尾と耳を触って首をかしげる私を見て、海月は右手を差し出してくれた。

私が頷いて右手を両手で持つと、海月は手を引いて私を立たせてくれる。

「ありがとう。」

私は何十年かぶりに一言話した。

ちゃんと声が出たか不安だったけど、海月はくすっと微笑んだ後、後ろを見て居る。

後ろでは三人が何とか立ち上がって、海月を心配そうに見ながら近付いていた。

私がそっちを見ていると

「名前、何て言うんだ?」

海月は地面に散らばった破れた紫水晶を拾いながら訊いて来る。

私は答えようとして、黙った。

わからない。

何て名前だったんだろう?

昔祠を訪れた人達は、祠の中の私を樹霊様と言っていたけどそれは私の名前じゃないと思う。

だから素直に

「わからない。」

と言った。

海月はそれを聞いて「ちょっと待ってて。」と言って三人と何か小声で話始め、私は自分がどんな姿なのか知りたくて祠に飾られていた鏡を見る。

黒かったはずの髪は銀髪に、耳は狐のような耳。服はぼろぼろの浴衣から白くて端が水色の綺麗な服になっていて、目は碧色だった。

最後にゆらゆら動くふわふわの尻尾を見て、私は生き返った訳じゃなくて霊じゃない何かになっただけなんじゃないかって思い鏡から目を背けた。

「名前、イーナってのはどう?」

始めてイーナと言う名前を海月から聞いた時、私は外国の人みたいな名前だなぁって思って悩む。

でも、今の私の姿にはぴったりな気がして少ししてから頷いて、

「どうしてイーナなの?」

と海月に訊いた。

「君の媒体になったオモチャの銃のモデルになった実銃がMK17だかららしいよ。名付けたのはこいつ、坂目だ。俺は山野 海月よろしく。」

海月は坂目を指差して、坂目は「おい止めろ。見た目ほど安全とは限らないぞ。」と小声で海月を怒りその手を払い海月の後ろに下がる。

そんな坂目を見て海月は

「こんな可愛いのに…。」

と呟いて、その後他の二人…八神と友輔を紹介してくれた。

私は自分が何なのか誰なのかわからないけど、可愛いと言って貰えるなら今日からイーナで居ようと思う。

しばらくして四人がそろそろ帰ろうってなった時、イーナをどうするかで話合いになっていた。

坂目は

「悪いが、俺は得体の知れないものを連れて帰る気にはなれない。」

と言う。

八神は

「会社の寮男性寮やからなぁ…。」(当時はまだ会社首になってない)
と申し訳無さそうにしてる。

友輔は

「俺ん家家族と住んでるし、ほら、連れてくんだったら海月ん家とかさ。親海外だろ?」

と、海月の方を見ていた。

海月は

「分かった分かった。ここに置いてく気は無いからな。まぁ媒体に使った銃も俺のだし。イーナ、一緒に暮らそう。」

そう言って私の手を引く。

この日から、私はイーナになって海月と暮らすようになった。

これからお話しするのはイーナの見て経験した出来ごと。
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