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プロローグ 一話「MK17」

プロローグ

社会人一年目の夏。

恋人の居ない俺を含めた四人は、肝試しと称して毎日のように深夜廃墟に行って暇を潰して居た。

そんな小さな冒険にも飽きはじめた頃。

四人のうちの一人が実家の押し入れの天井にあった隙間から見つけたという古いノートを持ってきた。

そのノートに書いてあった'物を媒体とした疑似生命の製造,を行った事、それが全ての始まりでありこの怪談録を書くに至ったきっかけである。

異チわ『MK17』

あの夏の日の出来ごとから丁度一年となる今日、今朝の話。

バトルライフルスカーヘビー次世代電動銃。これが今目の前で朝ご飯の卵焼きを食べながら、テレビに写る今日の犬(番組名)を真剣に見て居る狐耳幼女の正式名称だ。

その隣りで

「犬より猫の方がいいかなー」

と言いながら木製の机の中央にあるドクターペッパー(炭酸飲料・香りがキツい)に手を伸ばす男。あれは我家に居候している幼馴染みのフリーター八神 新兎(やがみ にいと)だ。

親友の中では背も高く茶髪。わりと頼りがいのある男なのだが、最近会社をクビになったらしく今は我家に居候している。

会社の寮に住んでいた為、両親には会社をクビになった事がバレていないようだ。

八神はドクターペッパーを一口飲むとこちらを向いて

「今日は俺休みやし、留守番しとく」

などと言い奇妙な匂いのコーラもどきの蓋を閉めた。

「何が休みやし、だよ…。居候してんだから洗濯物よろしく。」

俺は食べ終わった食器を片付けながら、八神に背を向けて言い仕事用鞄を手に取る。

今日は日曜日だ。多くの一般人は休みだが、料理関係の仕事ではそうはいかない。

鞄の中身をチェックし終わった俺を見ながら八神は、

「しゃーないな。イーナちゃんに手伝ってもらお。」

と呟く。

イーナとは、今日の犬(番組名)を見終わり退屈そうに欠伸をしている狐耳幼女の呼名だ。

去年の夏。

物を媒体とした疑似生命の製造に成功してしまった事で生まれた狐耳幼女に、その場に居た四人のうちの一人である坂目が名付けた。

何故イーナかと言うと、媒体である電動ガンの元となった銃がアメリカ軍に正式採用された時の番号が17だったからと言う事らしい。

鞄を持ち玄関に向かう。

車の鍵を持った事を確認していると、居間から小走りで歩く音が聞こえる。

「海月、今日は赤福買って来なくていい。」

声に気付き振り返ると、イーナが俺の服の端を手で摘みながらこちらを見上げていた。

俺の事を下の名前で呼ぶ人は親友以外ほとんど居ない。

くらげなんて名前だと大体の人は気を使って三代治で呼ぼうとするからだ。

昨日の夜イーナに誕生日プレゼントは何が良いか訊いたら赤福と答えたのだが、いらないと言う事だろうか?

「ん?やっぱケーキの方が良いか?」

俺の問いにたいしてイーナは首左右に小さく振り、ついでに尻尾も左右に振って答えた。

「まぁいいや。じゃあ何か代わりに…」

何かいるか、と言い終わる前にイーナの声がそれを遮る。

「いらない。早く帰って来て。」

緑色の瞳で真剣に見つめて言うイーナを見て、何か心にぐっときた俺はイーナから目をそらして左手で頭を撫でながら

「わかった。行って来る。」

右手で玄関のドアを開けた。

・・・

「山野海月先輩ぃ!今日で心霊体験し始めて一年目ですね!今年の意気込みをどうぞっ!」

職場の厨房に入ると同時に後輩の巳竹(みたけ)が元気に声をかけてきた。

巳竹はネットの心霊サークルでは有名で、独男四人組み以外で唯一イーナについて知っている女だ。

と、言うのも四人のうちの一人の友輔(ゆうすけ)がたまたま某有名掲示板に書き込んだ心霊体験談やイーナについての話をネタや釣り(ネット上で他者を意図的に騙す行為)だと思わず真剣に信じた挙句、イーナ見たさにこの町にやって来て同じ職場に就職して来たと言うとんでもない奴だからだ。

「意気込みなんて無いな。とりあえず今日はイーナの誕生日でもあるわけだから、プレゼント何にするかが悩みだ。」

調理器具を用意しながら巳竹に返事を返す。

世間が休日だと厨房は忙しくなる。憂鬱だ。

巳竹は昨日のうちに切り揃えられた食材を冷蔵庫から出しながら満面の笑みで

「ふっふっふ~!私はすでに準備してありますよ!眠猫(猫のキャラクター)ビッグ縫いぐるみです!!」

とか騒いで居る。

この店の開店時間は昼一時から。今ならどんなに騒ごうと客には聞こえない。

・・・

開店してから今まで休む暇など無かった。

最近は不景気で経費削減として二人での働く事が多い。

俺も巳竹も壁や冷蔵庫に持たれながら時計を見て居る。

仕事終了時間の八時になると事務所(ほぼただのロッカー置場)に行きタイムカードを押した。

仕事が終わった仕事場に用なんて無い。

店のすぐそばにある舗装されていない駐車場まで行くと、巳竹も後ろを付いて来た。がさがさと五月蠅い。

車の前で鍵を出しながら振り返る。

俺より少し低い程度の巳竹の背の半分くらいはあろうかというセガと書かれたビニール袋の中身、それが眠猫の縫いぐるみとやらだろう。

重そうにしながら巳竹が文句を言ってきた。

「先輩~!早く車のドア開けて下さいよっ!これ重いんですから!」

こいつ…乗せてもらうのが当たり前だと思ってやがる…。

「その重い縫いぐるみ、イーナに渡したとしてイーナがそれ持てると思うか?」

俺は文句に文句を返し、車のドアを開けた。

巳竹は俺の仕事用鞄をひったくって助手席に苦労しながら乗ると、膝の上に眠猫と鞄を乗せて

「さぁ行きましょう!あ、先輩もプレゼント買わないと。」

そう言うと助手席のドアを閉める。

・・・

駐車場からすぐ近くにある道路に出た。相変わらずこの車は揺れる。

「前を走ってる車、何かヤバそうなのが乗ってますねぇ…。」

しばらく進むと前を走る2tトラックの荷台を指して、巳竹は嫌そうな顔をしてそう言った。

巳竹の指した辺りを見ると確かに黒い人のような何かが張り付いているのが見える。

「またか…。最近黒い奴をよく見るんだが、何なんだあれ?」

巳竹は俺の質問にしばらく考えた後

「呪い…念の類いですかね。霊とかとはちょっと違いますけど、車間距離とって下さい。」

得意げに答えた。

イーナと出会った場所に居た、あの時の俺を含めた四人全員が一年前の今日から奇妙なものが見える体質になっている。

特に最近はよく見るようになってしまった。

巳竹は心霊サークルなんてものに入っているだけあって、恐山などの霊山に何度も足を運んでいるうち見えるようになったらしい。

信号がある交差点まで来ると、トラックは右折して行く。

赤福の店があるのはその辺りで、ケーキ屋はその先をもう少し行った所にある。

「あまり後ろを走りたく無いんだが…しかたないか。」

俺が溜息混じりにそう言いながらハンドルを右にきってすぐ、巳竹は左側にあるAMPM(コンビニ)を指して

「じゃあ、コンビニに車止めて歩けば良いんじゃないですか?どうせケーキ屋の駐車場狭いんですし。」

と提案してきた。

このままあのトラックの後ろを走り、やっかい事に巻き込まれるのもごめんだ。

「じゃあそうするか。」

俺は提案に賛成して車をAMPMに停めて車を降り、そして歩き出そうとした瞬間

爆発音がして巳竹が尻餅をついた。

「うわっ!?な、何なに!?」

腰が抜けて立ち上がれない巳竹の手を引きながら赤福の店がある辺りの道路を見る。

そこには爆発炎上するトラックとトラックの後ろを走っていたと思われる軽自動車の残骸、さらに爆発の一番の原因となったであろう横たわったタンク車があった。

トラックの運転席が開くのが見える。運転主はまだ生きているようだ。這い出ようとする運転主だったが、それを黒い何かが車内へと引込み

再び今度はトラックの燃料タンクに火が廻り爆発した。

声も出せず立ち尽くして居ると左手を強くひっぱられて驚いて左側を見ると、巳竹が何とか立ち上がって

「…さっきの、見ましたよね?」

と言っている。

俺は絞り出すように

「あ、あぁ…。警察に事情聴取とかされたら帰りが遅くなりそうだし、ケーキ買ってさっさと行こう。」

言いながら炎上するトラックを避け少し遠回りでケーキ屋に向かった。

・・・

ケーキを片手に玄関を開けるとすぐ、待って居たのは少し怒った顔をしたイーナだった。

「…いらないって言ったのに。」

イーナはそう言いながら俺の周りを一周して、少し俯きながら

「怪我はしてない…?」
呟いて安心したような表情を見せる。

「大丈夫。ごめんな。ちょっと遅くなった。」

俺が苦笑いして言いながらイーナの頭を撫でて靴を脱ぎ部屋へ入ろうとした瞬間玄関で、イーナが巳竹に

「不満だけど、ありがとう。」

と言って居るのが聞こえた。

異チわ後日談『17と誕生日』

いらないと言ったくせに、結局イーナはケーキの上の板チョコに書かれた'いーなちゃんお誕生日おめでとう,の文字を見て尻尾を振りまくりケーキを喜んで食べていた。

八神の用意していたプレゼントはサバイバルナイフ。幼女へのプレゼントにナイフってどんな選択だよ…とは思ったものの、貰った本人はナイフを構えてみたりして楽しんで居たので良かった…のだろうか?

巳竹は予告通り眠猫縫いぐるみを渡していたが、イーナはどうも椅子や踏み台として使うつもりらしく、途中から縫いぐるみに座りながらケーキの残りを食べていた。

俺はと言うと、プレゼントがケーキだけでは流石に…だったので'あいぽっとなの(流行の多機能音楽再生機),をプレゼント。

つい最近カラオケにイーナを連れて行った時、もっといろんな歌を歌いたいと言っていたからだ。愛用のPCに入っていた曲を適当に入れておいたのだが、その日の深夜こっそり起きて居たイーナはさっそくその中から一曲選んで歌っていたらしい。

(BGM:nanoRIPE ハイリープ)

最後に、あのトラックに乗っていた運転主が事故の数日前に離婚しており運転主の元奥さんが自殺していた事をテレビで見た警察の調べで知った。
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