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二話「17にできる事(邪視 前編)」

煮話『17にできる事(邪視 前編)』

電車の車内。

揺られながら、外の景色を見ていると学生時代を思いだす。

遅刻しそうになった朝。教室に一番乗りしていた俺と、必ずすぐ後にはやって来て居た変わり者な奴との会話。今は亡き八神家の祖父さん。海外出張に行く前の親父と母親。

社会人になると車に乗るようになり、電車に乗る事も少なくなっていった。

「海月、持ち上げて…。」

後ろから声をかけられ振り返ると、疲れた顔をしたイーナがこっちを見ていた。

進行方向の窓から外が見たいらしく、先ほどからイーナは背が足りないのを補う為飛び跳ねて見ようとしていたようだが流石に疲れてきたらしい。

「よっと…これで良いか?」

俺はイーナを縫いぐるみを抱えるように持ち上げて軽く声をかけた。

「うん。」

イーナは嬉しそうに返事をして尻尾を静かに左右に揺らす。

ガラス窓に微かに反射して見えるイーナの緑色の瞳には、一瞬と言うには少し遅いかもしれない速度で過ぎ去っていく木々や古い民家が写っていた。

俺が座っていた席のすぐ隣りから巳竹が

「おぉ流石男の子ですね先輩!背が低いとはいえ女の子を軽々と!」

などと茶化してくる。

巳竹の膝の上にはノートが2冊。

一冊は表紙に記録と書かれた古いノート。あれはあの日以来、発見者である八神が持っていた物だ。

もう一冊のノートには怪談記録☆と書かれて居る。あれの中身は巳竹が体験した怪談や御払いした神社などだ。

車ではなくわざわざ電車に乗って移動しているのは巳竹が「どうしても電車で移動したいんです!私が案内するんですから、良いですよね?」と言って来たせいなのだが、楽しそうにしているイーナを見ると電車も悪くないなと思えてきた。

ちなみに、八神はハローワークに行っている。不景気な世の中で職探しは大変そうだ。

「イーナは軽いからな。と言うか媒体になった電動ガンと同じくらいの重さしかないんじゃないか…?」

俺が巳竹に話しかけている途中で電車は駅に着く。

名残惜しそうに車内を振り返りながら歩くイーナの手を引いて、俺達は駅を後にした。

・・・

俺の家がある町も田舎だが、隣り町はもっと田舎だ。

巳竹を先頭に歩く俺達は田園風景を右へ左へ移動して行く。

蝉の声と日の光が容赦無く俺の体力を奪う。

イーナは一見平気そうな顔をしているが、電車に乗るまでの待ち時間の間に四本もの缶ジュースを空にしている。

「ほんと、この辺は何も無いな…。」

俺がつまらなさそうに愚痴をこぼす後ろで、イーナはこっちを見ながら本日五本目となるナタデココジュースを飲みきった。

「着きましたよ~!」

先頭を歩く巳竹がこっちに振り返り声を張り上げながら笑顔で手を振ってくる。

この暑い中何であんなに笑顔で居られるんだ…?

そこそこ長い石段を登ると、小さくも大きくもない一般的見た目の寺に着いた。

今回ここに来た目的は古いノートの読めないページや、イーナがどういった存在なのかを調べる事。

イーナと出会った日以来色々と調べてはきたものの、わかった事は人ではない事や何が好きで何が嫌いかくらいである。

「ちょっとでも何かわかると良いな。」

俺は遅れて階段を登りきったイーナに振り返り言うと、

「物、幽霊、人間、その他、どれだったら良いと思ってる?…私はイーナと呼ばれてきた。だから、海月にとって私はイーナであって欲しい。」

そう真剣な顔で返してきた。

勘違いされてしまったか。

「先輩は口下手ですねぇ~。イーナちゃん。幽霊だったら、病気とか色々心配しなくていい事や逆に心配する事もあります。でもそれがわからなかったら、心配すら出来ないじゃないですか。」

なんて言えば良いか少し困った俺を見て、巳竹は笑いながらイーナの側に行きそう言い頭を撫で…ようとして避けられている。

「えぇ~!?ぽふぽふ撫でるくらい良いじゃないですかぁ!!前は尻尾も触らせてくれませんでしたし!」

逃げるイーナを追いながら巳竹は少し寂しそうにそう言って、しばらく走り回っていた。

「巳竹の体力すげぇ…。」

神社の影に入り休みながら呟いて居ると、巳竹はこっちに来て小声で

「ふふっ…先輩。呪術系に詳しい寺への案内と、これで借し二つです。」

とか言ってこっちを見てくる。

ジュースでも奢れと?

「おぉ!なんじゃ騒がしいと思ったらお嬢さんか。また怪談聴きに来たのかい?ほどほどにしないと憑かれてしまうぞ。」

声がして前を向くとお坊さんらしき老人が立っていた。

巳竹は行く先々の神社や寺に行っては御払いついでに怖い話を聴いている。ここでも同じ事をしたのか。

「いえいえ。今回は不思議な子を連れて来ました。後、知りたい事を調べに。」

お坊さんは巳竹の言葉を聞いた後イーナを見て、驚いた顔をした後

「ここでは暑いだじゃろう。長い話になりそうだ。こっちへ。」

丁寧な口調で寺の中へと案内してくれた。

・・・

「ふむ…まず始めに言っておこう。そこの子は生物でも幽霊でもない。その間じゃよ。」

お坊さんは古いノートに目を通しながら言う。

少し埃っぽい木造の寺の中、座布団の上に正座しながら話を聴くのはなかなか珍しい経験かもしれない。

お坊さんは話を続ける。

「昔何処かの港で漁を生活の糧にしていた村があった。その村に住む者の中に漁に出た息子を嵐で失った母親が、息子を蘇らせようと行った呪術があったらしい。黒魔術に近いような呪術じゃ。」

巳竹も知っている話らしく口を挟む。

「あ!それ知ってます!でもそれって、結局息子じゃなくて気持ち悪い腐敗臭のする化物が出来ちゃうって話ですよね?」

巳竹の言葉に頷きお坊さんはまた話続けた。

「その呪術に改良を加え、さらに死体や骨ではなく物を媒体とし命に関わる対価を払うようにした結果その子のような者が生まれた。そうこのノートには詳しく書かれているようじゃ。霊でも生物でも無いので疑似生命と言う表現は間違った解釈じゃが。古い文字で、私のような年寄りでも一部の人しか読めんだろう。作り方の部分だけは読めるように書かれているのが不思議じゃ。」

命に関わる対価?

そんな物払った覚えなんてない。

思わず声が震えた。

「な、何ですか?命に関わるって、そんなの」

俺が言い終わる前に巳竹は小さい声で

「あぁそれで先輩にも八神さんにも居ないんですね。」

と呟く。

何だ?居ないって?

俺の疑問の答えは俺が訊く前にお坊さんが言う。

「守護霊じゃよ。本来なら、守護霊が全く居ない人などまぁ珍しい。普通の家系の者は亡くなった親族や飼って居た犬などの守護がある。じゃがお前さんにはそれが無い。対価として失ったんじゃよ。」

なんてこった。

たまに巳竹の後ろに居る黒いフードの骸骨、あれ守護霊か!

色々見えるようになってしまったのに、俺にはそれから身を守る術が無い?

呆然とする俺を横目で見ながら巳竹は首を傾げて話す。

「守護霊が消えたから先輩は私みたいに見えるようになったんですか?でも不思議ですねぇ。先輩に霊が憑いてるの見た事無いんですけど。」

仏像などを見飽きたのか、イーナが隣りに来て座った。

「弱い霊はその子が祓ったり、追い返したりしとるんじゃろうて。じゃが、見えるようになったのはその子の側に居過ぎたせいじゃ。人に霊感を持たせてしまうほどその子の力は強い。余程の事が無い限り側に居る者が憑かれたりする事は無いじゃろう。」

お坊さんはイーナを見ながら溜息混じりに言う。

それを聞いて俺が慌てて

「あの…じゃあ、イーナが風邪とかひいたらどうなるんですか?」

と言うとお坊さんはそれを聞いて笑いながら

「風邪、風邪か?はははっ!人でも霊でも無いのに病気、それも風邪なんてかからん。お経を聴いて身体が透けたりはするかもしれんが成仏もせん。それよりお前さんがその子からあまり離れんよう気をつける事の方が重要じゃな。」

そう答えた。

・・・

色々話を訊いていたら夕方になってしまっていた。

来た道を戻り駅まで戻る途中。

巳竹は長い黒髪を夕方の少し冷たい風になびかせながら、後ろ歩きをして話かけて来た。

「先輩、祓うってどうやってるんですかね?ほら、イーナちゃんは先輩によってくる霊とかを祓ってるって言ってたじゃないですか!」

確かに、それは気になる。

祓うと言うと神社で巫女さんが、紙の付いた棒を振り回している姿しか想像出来ない。

「イーナも紙の付いた棒振り回してる…とか?まぁみた事ないが。」

森のある方を見ながら少し後ろを歩いて居たイーナに振り返り訊いてみると

「違う。」

いつもよりさらに冷めた視線を森に向け続けたまま否定されてしまった。

森なんて別に珍しくもないだろうに。それとも、森に何か居るのか…?

イーナの側まで行き、隣りで同じ目線になるよう少し屈んで同じように森の方を見ると何か動くものが見える。

イーナは布地の薄いポンチョのような羽織り物に手を突っ込むと、ただでさえ低い背を屈んで低くした後

「あれはあまり近くで見ない方が良い。向かえうつからそこに居て。」

と言い残し森の方からこっちに向かってくる白いもの目掛けて走っていった。

自転車すら通れない田んぼの道とも呼べない細道を疾走するイーナの手には、夕日を反射して輝く物が握られている。

イーナの誕生日に八神がプレゼントしていたものだ。

白い動く物は人のような姿をしているが日を浴びていない人のような異様な白さで、イーナは走り出してから一切失速しないままサバイバルナイフを白いものに突立てる。

しかし、金属がぶつかり弾かれる音がしてイーナは2メートル後ろに飛ばされ器用に身体を丸めて無事着地した。

手元にはもう光る物は無い。いや、正確には折れてしまって根元しか残っていない。

少しずつ、しかし確実にこちらに近付く白いもの。

白いものの姿がはっきりとは言えないまでも明らかになって来た。

白い肌、露出度が高いとかよりもっと異常な物が目にはいる。目が一つしかない。それも、通常の生物とは違い縦に長く目が付いている。

何とも言えない恐怖、悪寒、そして不安。

白いものが何かを言っているのが聞こえる。

イーナのあまり見ない方が良いと言う忠告を思い出し何とか白い肌の化物から目を逸らした俺は、まずイーナを見た。

一瞬困った顔のイーナが写る。

次に少し離れた場所に居た巳竹を見た。
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