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六話「霊の居ない家(創造される者前編)」

七話「のべすけ(創造される者中編)」

名Na輪『のべすけ(創造される者中編)』

ギターケースの中身はストックを折り畳んだライフルだった。

それを見て坂目は立上がり

「おぉ…凄いのが出て来たな。G36Cカスタム、次世代電動ガンだぞ。」

とか感嘆の声を上げる。

Gというアルファベットが前に付いた名前のライフルにはドイツ製の物が多く、GとはGewehr(小銃を意味する)の略語らしい。

G36とは36番目の小銃と言う意味であり、Cとはコンパクトの略語だ。

まぁ、目の前にあるこれは日本製の玩具なわけだが。

マガジンを二本繋げたダブルマガジンを装填し、バイポットに変形するグリップを着けて、アメリカンディフェンスと書かれたミニダットを搭載した姿はイーナの銃になった時の姿によく似ている。

襖を開けて八神が戻って来た。

「うわ!坂目…それ持って来たんか?」

驚いた声でそう言いながら坂目に軽く軽蔑の目を向けて、俺達の側で布団の上に座る。

坂目は銃のバレルに付いていた赤い保護キャップを外しながら

「んなわけあるか。もし銃を持って来ていたとしてもライフルは重い。イーナみたいに、幼女の姿で後ろを歩いてついて来るならまだしも。」

とか面倒くさそうに言った。

幼女の姿で後ろを歩いてついて来るライフルこと、イーナは俺を見て

「私も銃になった方が良い?」

と訊く。

俺はイーナの頭を撫でて

「いや、大丈夫。だけど何でライフルが押し入れの天井なんかに…?」

と答えて呟く。

次世代電動ガンは高価だが、わざわざ天井裏のような取り出しにくく分かりにくい場所に隠さなければならない物では無い。

「押し入れって、ここの押し入れの天井か?ノート見つけた場所やん。」

頭を撫でられて目を細目るイーナを見ながら、八神は言った。

やっぱりか。

ならこの電動ガンも普通では無い可能性がある。

一瞬ギターケースの上に置かれたライフルから目を離した瞬間

「やっと出れたかと思ったら、まさか僕以外の銃精を見る事になるとはね。」

と言う声がしてギターケースを見直した。

「うぉ!?」

「ちょっ!?」

坂目と八神はほぼ同時に驚き、声を上げ八神は大袈裟に後退りしている。

ギターケースの上には銃の代わりに少女が立っていた。

背丈はイーナとほぼ同じ。

緑の髪にはクローバーに似て異なるマークの飾り、紅い瞳、猫のような垂れた耳と狐や鼬のような尾。

あのマークはM4ライフルのカスタムパーツで知られるノベスキー社(通称ノベスケ)のマークだ。

十字の斧を意味するマークらしいが、ギターケースから出てきたG36Cについていたアイアンサイト(金属製簡易照準器)に描かれたマークも十字斧だった気がする。

イーナの髪がツインテールなのに比べて、少女の髪はボブカットに近いようなショートヘアーでとてもボーイッシュな雰囲気だった。

「ふふっ、初めまして。僕は物を媒体とした人工生命の試作第一号、キルシュノベスケ。まぁ僕みたいな銃の玩具が媒体になってるものは銃精って言うんだけど。僕の事はのべすけって呼んで良いよ。」

のべすけと少女は名乗って八神に手を差し延べる。

「イーナと同じようなもん…なんか?」

八神はそう言いながら慌ててのべすけの手をとり立ち上がると、横目でイーナを見た。

「まぁそんなとこかな」と八神の質問に答えたのべすけは、イーナを見て

「3人とも君の影響を受けてるようだけど、君は誰のものなんだい?」

と不思議そうに首を右に傾けて訊く。

イーナは俺の右手を両手で掴み

「海月の。」

と一言だけ言って答えた。

「海月君、君はその歳であのミミズが這った後のような読みにくい旧字体が読めたのかい?いや、それともそこの二人が…?」

のべすけは俺の顔をまじまじと見つめて怪訝そうな表情で訊いてくる。

大人びた口調がどうも気に食わない奴だが、何か色々と知っているらしい。

旧字体とは、多分あの古いノートに書かれていた文字の事だろう。

実際現代文に訳された文字があった部分しか読めなかったわけだが、馬鹿にされたようで腹が立つ。

「作り方のところだけ普通に読める文字で書かれてた。お前は誰のものなんだ?押し入れの天井に置かれてたんだ。そうとうヤバいものなんじゃないのかよ?」

俺の解答と少しの苛立ちを込めた質問を聴いて、のべすけは溜息を吐き「あぁなるほど」と呟いた後

「僕はこの家のおじいさんによって作られた。だからおじいさんのものだった。どうやら僕がしまわれている間に、亡くなったみたいだね。」

と少し寂しそうに言う。

それを聞いて八神は

「うちの祖父さんがお前を作ったって…何のために?」

と、首をかしげた。

・・・

何処の家の風呂場も浴槽の広さはあまり大差はないんだなぁと、そう思いながら湯船から窓の外の星空を見る。

間の悪い事に八神の疑問にのべすけが答える前に風呂が沸いたと八祖母に呼ばれ、俺達は順番に風呂に入る事となったわけだ。

「窓が開いてるのに全然涼しくない。」

疲れたような声でそう言いながら、恨めしそうにイーナは湯船を眺めた。

っていやいや、何で入って来てるんだよ。

「イーナ。順番に入るよう言われただろ?」

俺は目線を隣りに向けないようにしながら言う。

「のべすけに背中流してきてあげなよって言われた。」

イーナはそう言いながら頭上に乗せていた短いタオルを湯船に浮かべて、その両端を湯船の中で中央に寄せた。

タオルの中に集められた空気でタオルの上部が湯船に浮く。

のべすけめ、余計な事を…。

「と、とりあえず、せめてタオルを身体に巻くとかしろよ。」

俺は自分が入る時に持ってきた大きめのタオルをイーナの方に投げ渡す。

イーナは

「海月に見られても困らない。私は海月のものだから。」

なんて言いながら水面を揺らした。

ちゃんと渡したタオルを身体に巻いているらしい。

水面の揺れが治まったのを確認してイーナの方を見る。

白く細い身体はタオルで隠されていても魅力的で、背の低さからか儚げな雰囲気もあり変な気をおこしてしまいそうになる。

「俺のものって言うの、やめろよ。」

俺はそう言いながら洗い場の方に向き直り、腕だけを浴槽から出した。

確かに媒体となった電動ガンは俺のだけど。だからってイーナの全てが俺のものと言うのは違う気がする。

イーナは困ったような表情で

「私は海月に望まれたから今も此所に居るの。だから海月のもの。」

なんて言うのだった。

・・・

風呂から寝室に戻ってきた俺達を見てのべすけは笑顔で

「やぁ、楽しかったかい?」

とか言いながら、三つ敷かれた布団の上を左右に転がっていた。

八神は風呂へ、坂目はヘッドホンで音楽を聴きながら何やら考え事をしている。

「何のつもりだよ。」

俺は苛立ちを込めた声でそう言うと、のべすけの服を掴んで子猫を持ち上げるように立たせ視線を合わせた。

しかし、のべすけは溜息を吐いて

「酷いなぁ。僕は君の為にイーナちゃんにアドバイスしただけなんだけど。」

と言い苦も無く手から逃れると一歩離れて冷静な表情になる。

「お、お前に俺とイーナの仲なんて関係ないだろ。」

俺は視線を逸らすとそう言葉を吐き捨てて布団の上に座った。

イーナも俺の方を見て真似するように隣りに座る。

のべすけはその様子を見ながら、やれやれと言いたげに肩を竦めて

「確かにそうだね。でも良いじゃないか。君はもうその子が居ないと霊にいつ憑き殺されてもおかしくない状態なのは自覚しているんだろう?イーナちゃんと一生を供に過すんだから、お風呂くらい一緒だろうと何の問題も無いさ。」

などと言う。

「いや良くないだろ。仮に俺が色々欲望に負けたりしたらどうすんだよ。」

俺が言う事の意味をイーナは理解出来ないらしく、首を傾げている。

だが口調と同様に大人びているのべすけは意味が理解出来たらしく、

「大丈夫大丈夫。仮にそうなっても銃精は子供なんて出来ないからね。」

と笑って応えた。

イーナと余り背も変わらないのにマセてんなこいつ。

「のべすけ、お前いったい何歳なんだ…?」

俺は恐る恐る訊いてみる事にした。しかし、のべすけに口の前に人差し指を立てられ

「女の子に年齢を訊くものではないよ?」

と、言われるだけで答えては貰えなかった。





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